前書き

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「じゃあ、まず初めになんで新しいレシピを考えなきゃいけないか、だな」  オニキスはタイトルの下に『目的』と綴る。それからしばらく逡巡した後、『私はこれまで毎日のように食べてきたポテトサラダがある。それはおいしいのだ。おいしいのだけれど、ここのところ飽きが来ていた。なので、新しい食べ方を考えたいと思う』と綴った。 「何それ?」 「次に、現状のレシピ、と」  オニキスはお構いなしに続ける。「じゃあリュカ、レシピ書いて」 「え?」  いきなり羊皮紙がこちらに向けられてリュカは戸惑う。 「なんで?」 「改善にはまず、現状からだろ」 「……わかったわよ」  渋々リュカはレシピを書いていく。料理名、人数、調理時間、材料、調理手順。羊皮紙には綺麗な文字が書き込まれていく。 「よし。あとはレシピだ」 「そうね。まず何から変えていくかのアプローチが必要ね」  スイッチの入ったリュカの言葉に熱が込められていく。 「お、おう」  まるで淫靡な魔物に取り憑かれたように熱を帯び始めるリュカにオニキスは押され始める。料理の奴隷。自らの好きなものに取り憑かれるときの熱の浮かされかたは、自分以上であることをオニキスは忘れていた。 「じゃあ、まずは材料から見直しましょう」 「……はい」
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