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『アウラ』
天界ではかっかとなりやすい質の火の精霊が雲の精霊に話しかけていた。
「雲の精霊よ、お前はいつもお前の後ろに誰かを隠しているようだ。俺のように堂々としたらどうか。」
雲の精霊はぷかぷかと煙をふかしながらそれに答える。
「堂々とするも何も俺はいつも空に浮かんでいるじゃないか。それに物事には裏表というものがあるもんだ。ゆらゆらと透けていられるお前みたいな方が珍しい。」
「だからと言って太陽だ月だを背後に隠してのんびり顔をされては困るのだ。あ、ほれ、見てみろ。あそこに望遠鏡に目を当てて月を見ようとしている学生がいる。お前がいると邪魔なのだ。」
「わかった。わかった。退いてやる。六時間もすればここから退いてやるのだからそれで好いだろう。」
「それでは朝になってしまうではないか。」
「朝にならずとも月のほうから勝手に退くよ。」
雲の精霊は笑って言った。
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