《ガーディアンズ1  ワルツ》

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《ガーディアンズ1  ワルツ》

 あたしたち三人の乗るバギーの真上を中心とするように、空模様が変化している。どちらかというとやや右より、崩れかけた空の下を走行していた。とりあえずの目的地であるオーランドは、位置的に雲の下になる。このまま進めば、あと小一時間もしないうちに雨か雪が降り始めるだろう。  バギーとは言っても、ロールバーの周りは天井まで強化グラスでふさいであるから、濡れる心配はない。ボロヒーターでもなんとかなっているのは、この強化グラスのおかげだった。二十年前にヒロがこの車を手に入れた段階では、骨組みにモーターとタイヤだけの見るからにバギーだったという話だが、元々が大型トラクターをベースにしていることもあって無駄に大きい。室内が広すぎるからヒーターも効かない。  あたしはいい加減この車に嫌気がさしていた。  改造なんかしてないでほかの車を買えばいいのに、と何度も思ったが、愛着があるのかただの趣味なのか、ヒロは行く先々で改造を依頼する。ただし、なんの注文も付けない。次に行く街にあわせてくれ、とだけ言う。  その度にクラフトマンたちはおもしろがってやりたい放題、今では後部にベッド付きの居住スペースまで付いてしまっている。リヤシートまで含めると、八人が楽に乗れる広さがあった。 「ねぇ、雪みたことある?」  右横のヒロではなく、すぐ後ろでまだ眠そうな目をしているゴルドに訊いてみた。 「俺は北の出だからな」     
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