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《ガーディアンズ1 ワルツ》
暗雲を見上げたままぼそっとそう言うと、ふと、思いついたようにシート越しにあたしを見つめ、全身を上から下まで眺めて、自分の着ていた上着を脱いだ。
あたしは露骨にいやな顔をして見せたが、ゴルドは気づかない振りをし、脱いだばかりの上着を放ってよこした。
「なんのつもりよ」
「その身体つきじゃあ、俺のいた街なら一日だって持たんよ。このまま雪が降ればもっと冷え込む」
あたしは顔をしかめ、上着を投げ返す。
「余計なお世話よ。この程度の寒さで音を上げるなんて思ってほしくないわ。南国じゃ、あたしみたいのをスレンダーっていうの」
身体ごとゴルドの方を向き、ジャケットの前を開いてぐいっと胸を突出した。
「どう? あんたの街の娘と比べて」
「…………」
ゴルドはもう一度あたしの全身を上から下まで眺めて、ため息をついた。
「そんな小さいもの、自慢するな」
「なんだって?」
「北を甘く見るな。寒波がくれば何を置いても、とにかく食いまくって体温を上げるしかないんだ。マイナス六十度だぜ。家を燃やしたって暖ったまらねぇだろうよ。シルヴァは根性はあるかも知れんが、基礎体力の差はどうにもならんだろう」
今度は投げようとせず、いい加減だが適当にたたんで差し出してきた。彼なりに気を使ったつもりだということは判るのだが、それはかえってあたしの感情を逆撫でする。
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