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シャッという小気味よい音と共に、眩い光が顔を覆う。
先ほどまで遊んでいた夢が徐々に遠のいていき、頬に温もりを覚えた。
ライル・グランドールが重い瞼を開けると、穏やかな笑みがあった。
「おはよう、ライル」
頬を撫でた温もりが、強引にブランケットを剥ぎ取る。
「……おはよう、ママ」
「もう少し寝ていたい」という呟きは、残念ながら母親の耳には届かなかったようだ。
手早く畳まれたブランケットが、腰に載せられる。
「さ、早く着替えて、朝ごはんを食べましょ」
ドアを大きく開けて、母、ミルシェが部屋から出ていった。
「う……ん」
ベッドから降りずにぼーっとしていると、隠れていた睡魔が襲ってくる。
再び誘いにきた夢の手を取ろうとした時。
「二度寝は許さないわよ!」
「はっ!」
鋭い怒声に身体がびくっと震え、そのはずみにブランケットが落ちてしまった。
「すごい……もう眠くない」
がちがちに固まった身体を起こした。くしゃくしゃの髪を耳にかけ、腕を伸ばし首を回して、ほぐしていく。
フローリングの床はひんやりとしていた。
クローゼットの引き出しを開けて、着替えを探す。水色のTシャツと、ダークグレーのパンツを取り出して、腋に抱えた。
カーテンの隙間から、空が覗いていた。雲一つない晴れた空の色は、自分の瞳に似ている気がする。
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