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「今日は何をするの?」  空のマグカップを弄びながら、ミルシェが尋ねた。  ライルは五枚目のトーストを切り分けながら答えた。 「んんと……昨日絵を描いたんだけど、まだ色を塗り終わってないから、塗る」  はむっと頬張ると、唇からストロベリージャムが垂れて頬を汚した。 「ワークはちゃんとやってる?」  不意打ちの質問に 「むぐ……今日、やる」  自分のカップを掴むも、こちらも空っぽだ。  ミルシェは紅茶を注いでやりながら、更に質問を重ねた。 「一日五ページずつやるっていう約束は、守ってる?」 「ごく……一日サボったら、次の日に十ページやればいいんでしょ?」  余裕だよ、という答えにミシェルは眉をひそめた。 「……何日サボってるの?」 「サボってないもん」  はあ、とミルシェは大きな溜め息を吐いた。 「あと二日で十三になるっていうのに、自分で決めたルールを守れないなんて情けないわよ、ライル」  また始まった。母のお小言タイムだ。  真面目に聞けば聞くほど、無駄を見る。  ライルは慌ててトーストをたいらげると、ナイフとフォーク、皿とカップをシンクに運んだ。  逃げるように階段を駆け上がっていく背中に 「家の中で走るなって言ったでしょう!」 「うるさいなあ、もう! 分かってるってば!」  二階に上がりきると、姿の見えない母に向かって「べえ」と舌を出した。
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