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なるべく平らな部分を探し、腰を落ち着ける。背中から下ろしたバックの中から、小指の先ほどの白い固まりを三つ取りだす。一つを自分の手に残し、残りを先に入ってへばっていた二人に放り投げた。
受け取りはしたものの、両足は前に投げ出し、背を岩に預け、肩で息をしている二人はそれ以上動こうとはしなかった。
まあ無理もない。昨日まで極普通の生活を営んでいたのだ。五百メートル級とはいえ、普段着のまま越えられるほど、山は甘くない。今更後悔しても始まらないのだが、せめて靴だけでもなんとかさせておくべきだった。
自分の手に残した物を口元に運んで、表面コーティングの端をかみちぎる。二秒ほど待つと、破れた穴を押し広げ、中から白い物が出てくる。両手で広げると、一枚のタオルになった。
とりあえず、顔と髪の毛の水分を取り除ければ、今はいい。
二つ目の理由は、明確な敵が存在しないこと。あたし自身の予定があるので断りたかったのだが、付いてきてくれるだけでよい、と言うタキの言葉をとりあえず信用した。
これは本来、ガーディアンの仕事ではない。ポーターやガイドが請け負うべき内容である。ガーディアンの前身は救助隊だ。ガード、イコール、保護であり、相手が人間とは限らないのだが、まったくなにもない、というのは通常あり得ない。だから、とりあえず、なのだ。ガーディアンを雇うだけの理由は必ずある筈だ。
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