人理を外れた境界にて

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. 少女は極楽浄土入りは果たせずとも 地獄の厳しい罰を受けずに済んだ。 その理由の大半は彼女の両親にある。 娘に先立たれた二人は 娘の死後、 娘が好きだった物を供え、 仏壇の遺影に手を合わせ、 盆参りも欠かさなかった。 その熱心ぶりを伝えたのが 少女の隣に立つ雪達磨男なのだが。 その甲斐あって、少女は 転生を待つ事を言い渡された。 少女は雪達磨男に舟の上で 問われた答えを己の中で紡ぐ。 人間を裁く閻魔に願い出る。 「閻魔様、その 妖怪を裁く地獄では 人間だった者はいますか? 罪人としてでなく、えっと なんて言うのかな… この人、みたいに働く方で」 隣の異形を指して少女は 人間の身でありながら 烏滸がましくも閻魔大王に問う。 「転生は順番待ち、なんですよね? 待っている間、 私が暇でいて良いなら ひなの罪を責めるのが 誰でも良いのなら せめて ひなを励ませる場所に居たい、です。 ひなが罪を犯したのは 私の為、なので」 彼女のその申し出は 隣の雪達磨男も 抱いている人形も 閻魔大王以外が驚嘆に染まる。 閻魔大王がその申し出について 是非が如何だったかは 敢えてここでは語るまい。 .
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