justice

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 俺は一瞬で辰巳の目の前に、水の壁を作る。同時に辰巳が銃を抜いて撃った。が、二センチも食い込まないで鉛の弾は水の壁に阻まれてひしゃげる。水の力を侮るなよ。  ついでに辰巳の銃も粉にした。 「まだやるかい? 頭を水球で包んであげてもいいんだぜ」  辰巳は両手をあげた。 「オーケー、判った。斉藤には二度と近づかない」  悟に促されて部屋を出る。追ってくるわけもなかろう。階段を下りて駅に向かった。 「あの……」  歌織が俺の袖を掴む。 「どうした?」 「あの……軽蔑しないでください」 「ん? ああ、“ブレーカー”の事か。する訳ないだろう」  俺は歌織の頭に手をおいた。 「生まれつきなんです。ですから最初からマスタークラスなんです」  ダブルハートと呼ばれる、生まれつき持っているマスタークラスに、さらにもう一つの能力を持っている状態。 「…………? なんだ? 何が言いたい」 「だから、優一朗が“発病”した時、相手の“ブレーカー”を止めることも出来たの」  なんだ、そんな事か。 「そんな事をしたら、お前も奴等の手先にされてたぞ。そうなっていたら、それこそ本当に軽蔑される存在になる。言っておくぞ。“ブレーカー”全部が嫌われている訳じゃないんだ。俺たちの代表のアルは“ブレーカー”だ。それでも俺たちはアルについていった。十六万人だぞ。それで俺たちを信じられるか?」  歌織はしばらく俺を見つめていたが、ゆっくりと頷いた。 「ごめん」 「なにがだ?」 「あの時助けてあげられなくて」 「だからもういいって。────行くぞ」  少し先を歩く悟に追いつくように、少し小走りに、歌織の手を取って歩いた。    ☆  事務所に戻ると礼子さんが食事の用意をしていた。  悟は歌織の部屋にする予定の場所まで、彼女を案内をしていた。 「ちょっと早くないか?」 「歌織の歓迎会も兼ねるの」 「ああ、そうか。なにか手伝うか?」 「断る。あんたに頼むくらいなら、キャンディーに頼むわ」  そのキャンディーは後ろで聞いているぞ。 「あたしがなあに?」 「なんでもない。つうか判ってんだろ、テレパスの癖に」  俺はキャンディーを引っ張ってリビンぐのソファーに腰掛けた。 「なによ」 「怒らすと後が怖いぞ」  キャンディーは激しく頷く。 「判った、判った」
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