justice

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 キャンディー・メム。こいつはフランス系のテレパスだ。まだAクラス。常に二、三人の思考のノイズが頭に入ってくる。遮断出来るのは、マスタークラスのみだ。実際は“ブレーカー”よりも忌み嫌われることが多い。誰でも自分の考えを覗き見されたくはないだろう。俺たちはそんなものを取っ払った信頼関係で結ばれているから、気にしない。だから俺が、キャンディーに好意以上の感情を抱いていることも、ばれているのは知ってはいる。でも今はこのままでいいのだ。マスタークラスになるためには、人を信頼する事を学ばねばならない。今のキャンディーにはそれが出来ないのだ。“発病”のきっかけが他人を理解しようとして起こるのに、“発病”してしまえば、他人を信用する事など出来なくなってしまう。大きな矛盾がここにある。そしてマスタークラスには完全な信頼を持たねばなることは出来ない。俺に対しての信頼感を持たせてあげたい。  そう言えば。甲斐巧美。彼女はインテリジェンススーパー。ありとあらゆる情報をすべて手に入れることが出来る。テレパスの一種らしい。クラスはZクラス。すべての思考が彼女の頭に入り込んでくる。大抵は廃人になってしまうらしいのだが、巧美はどういう訳かその思考を一旦どこかにしまってしまうらしい。その中から、自分が必要とする情報を自在に引き出せる。これもVIAの科学院が調査した結果だ。  無敵と言えば無敵だ。だから彼女は一人で事務所を構えている。甲斐インテリジェンスサービスステーション。最後のステーションはこじつけっぽいが。略称は『KISS』と言う。VIAの日本支部も兼ねている。  彼女は自分が危険に晒されると事前に察知し、姿を消す。礼子さんの能力に少し似ているが、性質が全く違う。自分に悪意を持った思考は、他の思考よりも強く入ってくるとの事だ。一人でやっていられるのはそのおかげだ。  俺たちにもどうにもならないような情報は、実は彼女のところから仕入れている。 「なに、あんたまだ気にしてるの?」  キャンディーが俺をみて言う。背もたれに両腕をかけて、足を組む。細いな。それで綺麗なブロンドの長いストレートヘア。この姿に俺は憧れているのだ。 「姿だけかね? 性格はほめてくれないの?」 「判ってるだろ。性格が悪い女になんか惚れないよ」 「ふふ」  キャンディーは不適な笑いを浮かべる。 「始めて口にしたね? どういう心境?」
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