justice

4/269
前へ
/269ページ
次へ
 先に挙げた八人のうち、アルベルト、大沢誠悟、甲斐巧美、以外の五人はすべてこの事務所”ジャスティス”に在籍している。というよりもここに住んでいるのだ。三十八階建てのマンションの最上階の一階下、三十七階のワンフロアーすべてが住居兼事務所だ。  因みに最上階は誰も住んではいない。ダミーだ。事務所のメンバーは一旦最上階まであがり、一号室から入って、それからこの階に階段で降りてくるのである。通常この階にはエレベーターは止まらない。アポがある依頼人が来た時だけ、表示は三十八階で、この階に止まるようにしてある。 「えっと、でも、あの地球政府統合って、ちゃんと選挙やりましたよね?」  何を聞いていたんだ、この女は。 「だから、人口は拮抗していたって言っただろ。そこに俺たち”魔術師達”の十六万票がどれだけ重要なものか判るか?」  歌織は首をかしげる。 「でも、どっちに投票するかは自由ですよね?」 「莫迦か、お前は。俺たちが肩入れした方に決まっているだろ」 「どうしてですか?」 「ああ、もう!」  俺はテーブルを叩きたくなる衝動を抑えるのに必死だった。 「だから、俺たちが荷担した方の政府は俺たちのいいなりだろ?」 「そうなんですか?」 「…………。もういい。説明しない。実際にそうだから、そう覚えておけ」 「はあ。判りました」  誰だこいつ連れてきたのは。……礼子さんか。全く、なんでこんな話をしなきゃならないのだ。 「で、優一朗はなんで私に連絡くれなかったのかな?」  ほう。いきなりそっちに話を持って行くか。 「先に連絡をしてこなくなったのはお前だろ」 「まあ、そうだけどさ。その程度の女だったって事?」 「なんでそうなる。お前が勝手にどっかに行ったんだろ?」 「うん。中国ね。でも二年で同じところに戻って来て、番号も前と変わらなかったよ。っていうか、お母さんずっと家にいたし」 「…………。どこに行ったかは教えてくれなかった。それだけだ」 「ふーん。まあ別に気にしてないけどね」 「…………」  俺は早くこの場から抜け出したかった。でも隣の部屋にはまだ客がいる。 「なんで中国に行ってたかは聞いてくれないの?」 「……聞こうか」 「能力開発センターに行ってたの。私、“眠り姫”だから。能力コントロールを学んできたのね。それでマスタークラスになったの」  ほう。“眠り姫”か。そいつはこの事務所には都合がいい能力だ。
/269ページ

最初のコメントを投稿しよう!

58人が本棚に入れています
本棚に追加