justice

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 名前の由来は“発病”時に長期にわたる睡眠に陥るところにある。早くて一週間、長くて一ヶ月。これはまだ解明されていないが、女性にしか現れない能力だ。能力的にはその名前とは裏腹に、自分が眠るのではなく、対象者を眠りにつかせる事が出来る。マスタークラスであれば、かなり自由にコントロール出来るだろう。たしか距離はほぼ関係ない筈だ。能力の使いっぱなしの必要もない。起こそうと思わなければ、その気になれば一生そのまま眠らせておける、かなり恐ろしい能力。  まあ、そういう俺も“分子破壊”のマスタークラスである。後の研究で判った事だが、俺は分子以外にも原子も操れるらしい。かなり危険だからやるなとは言われている。核融合、核分裂をなんの施設もないところでやったら、どうなるか考えてみればいい。  例えば俺は自分の目の前に水の壁を作る事が出来る。これは単純に空気中の酸素と水素の電気的結合で簡単にできる。水の壁といえど、侮るなかれ。十センチほどの水の壁で、銃弾など簡単に防御できる。逆にどんな堅い壁でも、俺は塵に出来る。分子の結合を解いてしまえばいい。ここからクラッシャーという名称がつけられた。俺も距離は関係ない。どんなに離れていてもなんの問題もない。ただし見える範囲には限られる。 「そうか。連絡が来なくなったのは丁度俺たちが動いていた時期だったな。確かに忙しくて連絡する暇が無かった事も確かだ。それは謝る」 「いいよ。別に。もしも動いてくれてなかったら、私も金星に連れて行かれてたもの。丁度”魔術師達”が解放された直後だよ、“発病”したのは。だからそれはそれで感謝してる。でも探そうと思えば出来たでしょ?」 「確かに出来た」 「うん。だからもういいの」 「そうか」  と、ノックの音がして礼子さんが入って来た。手にトレーを持っている。テーブルの上に紅茶を四つ並べる。 「悟がもうすぐ来るわ」 「ああ、そう」
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