justice

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 これが礼子さんの能力だ。スペシャルセクレタリー。彼女のスケジュールに沿って動けば、どんなに不可能に思える行程も、難なくクリア出来る。反対にかなり余裕を持った時は必ずそれに従わなくてはならない。乗る予定だった飛行機が、整備不良で飛ばなかったり、無視をして強行した場合、事故などでかえって遅れるのだ。多忙だった銀河元年は、彼女がいなければあれほどうまくはいってなかっただろう。金星時代は、アルベルトのスケジュールを分刻みで組んでいた。彼女はそれらすべてを自然にこなす。特に意識はしていないそうだ。  またノックの音がして、今度は悟が入って来た。  礼子さんは歌織の隣。悟は俺の隣に腰を下ろす。 「で、どうですか? 青山さん。うちの組織の事は判っていただけました?」 「え? 全然聞いてませんけど……」  悟が俺を見る。 「知らねぇえよ。説明しろなんて聞いてない」 「普通説明するでしょ?」  礼子さんまで俺を非難する。 「つうか、歌織を事務所に入れるのか?」 「そうよ。そのために連れてきたんだから」 「だったら初めっからそう言えよ」  礼子さんは深いため息をつく。ちょっと待て。悪いのは俺なのか? 「ごめんね、こんな役立たずで。ちゃんと説明するわね」  そう言って礼子さんは俺に冷たい視線を向ける。 「おい、ちょっと待て。ホントに俺は何も聞いてないぞ」 「ナンバースリーが聞いて笑っちゃうわ。聞いて無くてもそれくらい判るでしょ」 「判らねぇよ」 「まあ、いいわ。莫迦は放っておいて、仕事の話をしましょう。────あのね、うちの事務所は基本的に情報屋なの。情報を売ってお金にする。情報っていっても色々あるけど、簡単に手に入るものは価値なんてないわよね? だから結構非合法なこともやるのよ」 「非合法な事しかやってねぇだろ」 「うるさいわね、役立たず。────だからここには“魔術師達”しかいなの。あなたなら勤まるって、昨日言ったでしょ? “眠り姫”だもんね。悟と優一朗と組めば大概の情報は手に入るわ」  歌織はあからさまに嫌そうな表情を浮かべる。 「え。この男と組むんですか?」 「まあ、昔の事は知ってるけどさ。それはもう話したんでしょ? まだ根に持ってる?」  歌織は下を向いて首を振った。 「ならいいじゃない」 「まあ、そうですけど……」 「なに?」 「だってあたし、優一朗から嫌われてるから……」 「は?」
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