justice

8/269
前へ
/269ページ
次へ
 歌織は俺のひとつ下。誕生日に極上の星空を見せてやる、と言って、真夜中にメディアセブンの寮を抜け出し、廃ビルの屋上に登ろうとした。が、当然鍵がかかっていて開かない。無理矢理開けようとした時に“発病”した。  どんな能力でも、“発病”した直後は暴走が起きる。俺はその周囲一帯の廃ビルをすべて粉々に砕いてしまったのだ。そこにまた間が悪いことに、パトロールがまわって来ていた。“ブレーカー”を乗せた発病者回収専門の車だ。俺はなす術もなく、“ブレーカー”によって能力を遮断され、拘束された。そのまま金星行きの船に乗せられ、十年間、訓練を受け続けた。  悟に出逢ったのもその頃だ。巧美やキャンディー、他のメンバーもすべて。慎悟だけは金星には来なかった。いや、きても勝手に地球に帰れる能力がある。“テレポーター“なのだ。  “ブレーカー”の一部と“テレポーター”だけは金星には来ない。“ブレーカー”には利用価値があり、“テレポーター”は先の通りの理由だ。だから“魔術師達”の一種、差別的な歴史を終えたにも関わらず、“ブレーカー”だけは“魔術師達”からは嫌悪の対象になっている。当然だ。奴らさえいなければ、金星に行かなくても済んだのだ。  まあ、話がそれたが、俺が地球に戻ってまず最初にやったこと。すでに解体が決まっていた“魔術師達”の捕獲組織をあらかた壊滅させた。当然、それが原因で亡くなった人もいる事は理解している。だが、哀れむ気持ちはこれっぽっちもない。  俺たちが金星で体験した事を語れば少しは理解して貰えるのだろうか。  まずは自分の能力をコントロールできるようになるまで訓練を行う。ある程度までできるようになると、次はステップアップの行程に入る。ほぼコントロール出来ないZクラスからAクラス、完全にコントロール出来るマスタークラスに別れる。マスタークラスは、殆ど何もしない。ただ日々自分の能力を高めるだけだ。Aクラスにあがり、一年が過ぎると、他惑星の開発にかり出される。俺たちは勝手に船を下りられる能力があるため、乗せられる事はなかった。“ブレーカー”の一人や二人、その程度の数なら殺してしまえばいい。殺せないまでも俺の左腕は義手だ。“ブレーカー”だろうがなんだろうが、行動不可能な状態にする事など容易い。
/269ページ

最初のコメントを投稿しよう!

58人が本棚に入れています
本棚に追加