ありふれた恋の物語

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 俺の気のせいかもしれないが、手術当日は朝から病院内が騒がしかった。  病院内の売店に行く途中、ナースステーションから看護師たちの会話が聞こえてきたが、どうやら危篤状態の患者がいるらしい。  医者や看護師がその患者の対処のため、院内を走り回っていたから騒がしく感じたのかもしれない。  昼になり、俺は手術の直前準備のために担当医の元に向かった。  院内は相変わらず騒がしかった。  今日で病気が治るのかと思い、ドキドキしながら廊下を歩いた。  廊下を歩く最中、一人の患者が手術室に運ばれていくのが見えた。 「芹さん!大丈夫ですか!聞こえますか!芹さん!」    運ばれた患者は芹さんというらしい。  少しだけ距離が離れていたから患者の顔は見る事ができなかったが、おそらく芹さんがナースステーションで噂されていた危篤状態の患者なのだろう。  医者からの説明はドナーに関するものがほとんどだった。  事情はわからないが、臓器を提供してくれる相手は身元を開示して欲しくないらしい。  俺は相手の情報を追求しない事を約束し、手術用の服に着替えた。   そのあと俺は手術室に運ばれ、酸素マスクのようなものを口に付けられた。     
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