ありふれた恋の物語

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 酸素マスクにも似たそれは麻酔の役割を果たしていたらしく、俺は目上に広がる手術室のライトを眺めながら意識を失った。  次に目を覚ました時、すでに手術が終わってから数時間経っていた。  よくわからないが、手術自体は成功したらしい。  看護師さんに今後の日程を軽く説明され、暇になった俺は一縷の望みをかけて屋上に向かった。  せめて手術が成功したと彼女に伝えたかった。  だから君も頑張ってくれと言うつもりだった。  もちろん彼女は屋上に居なかった。朝8時頃なのだ。  彼女が屋上に居ないのも無理はない。いつもよりも数時間早いから。  屋上からの帰り道、一つの病室の前を通りかかった。 「ミズキっ!ミズキぃ!嫌!嫌!ああああぁあ」  そんな叫び声の響く病室だった。  中には身内と思われる人達と医者、看護師がいた。  一人の女性が患者を抱きかかえながら叫んでいた。  どうやら、患者が一人亡くなったようだった。  興味本位で病室のネームプレートを見た。“芹 瑞樹”と書かれていた。  どうやら、僕が手術前に見かけた患者だったようだ。  手術から数日後、担当医に呼ばれた。  退院手続きをしてくれと言われ、手続きをした。  俺は書類に目を通す中、気になっている事を医者に聞いた。 「先生。あの…俺と同じ病気の女の子を知りませんか」     
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