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椅子から転げ落ちて頭を打ち、更には身体がごろごろと回転してやっと止まる。
「痛って…!」
床にうずくまり、立てない。
くっそ、あちこちぶつけたな。
身体中が痛い。
一体何なんだよ。
見上げると、いかにも幸運そうなツラをした奴らが、困惑しつつもにやけ顔でこちらをうかがっていた。
柳沢に中原、お前らか。
高校生にもなって教室でプロレスごっこかよ。
勘弁してくれ。
「やっべー、ヲタ朗じゃねーかよ…」
「逃げちまおうぜ…」
そんな呟きが聞こえたが早いか、奴らはどこかへ走り去っていった。
…とんだとばっちりだ。
床の上で座り込み、頭を押さえる。
「大丈夫?」
後ろから、女子の声。
この声は、もしかして…。
「君、今頭打ったでしょ。保健室行こうか」
三好燐火が、俺に手を差し出していた。
容姿端麗、頭脳明晰、温厚篤実、聖母マリア。
そんな言葉をいくら並べても足りない、天使のような女だ。
参ったな。
怪我の功名って奴か?
こんなチャンス、滅多にないからな。
差し出された手に、素直に掴まる。
「あ、ありがとな」
俺が言うと同時に、ぐいっ、と腕を身体ごと引っ張られる。
俺の身体は座った状態から、直立の姿勢にさせられた。
この女、結構力あるなぁ。
「自分で歩けそうだね」
後ろに1歩下がりながら、にこりと微笑む。
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