第1章 妹だって言ってんでしょ!

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椅子から転げ落ちて頭を打ち、更には身体がごろごろと回転してやっと止まる。 「痛って…!」 床にうずくまり、立てない。 くっそ、あちこちぶつけたな。 身体中が痛い。 一体何なんだよ。 見上げると、いかにも幸運そうなツラをした奴らが、困惑しつつもにやけ顔でこちらをうかがっていた。 柳沢に中原、お前らか。 高校生にもなって教室でプロレスごっこかよ。 勘弁してくれ。 「やっべー、ヲタ朗じゃねーかよ…」 「逃げちまおうぜ…」 そんな呟きが聞こえたが早いか、奴らはどこかへ走り去っていった。 …とんだとばっちりだ。 床の上で座り込み、頭を押さえる。 「大丈夫?」 後ろから、女子の声。 この声は、もしかして…。 「君、今頭打ったでしょ。保健室行こうか」 三好燐火が、俺に手を差し出していた。 容姿端麗、頭脳明晰、温厚篤実、聖母マリア。 そんな言葉をいくら並べても足りない、天使のような女だ。 参ったな。 怪我の功名って奴か? こんなチャンス、滅多にないからな。 差し出された手に、素直に掴まる。 「あ、ありがとな」 俺が言うと同時に、ぐいっ、と腕を身体ごと引っ張られる。 俺の身体は座った状態から、直立の姿勢にさせられた。 この女、結構力あるなぁ。 「自分で歩けそうだね」 後ろに1歩下がりながら、にこりと微笑む。     
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