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「名前は?」
「1年A組、佐倉直太朗」
「今朝、何食べた?」
「ご飯、味噌汁、焼き魚」
「これ、何本に見える?」
「2本」
「いえーい」
「…」
養護教諭の遠野織子が真顔でジョークを飛ばすのはいつものこととして、俺の体調は至って普通。
丸1日は様子を見るようにと言われたが、様子を見るってのは何をしたらいいんだ?
…まあいい。
もう授業は始まっている。
さっさと保健室を後にしようとする俺を、三好燐火が呼び止める。
「ヲタ朗くん、これ…」
「あっ…」
俺の、携帯が…。
画面にヒビが入り、少し、折れ曲がっている。
さっきの拍子に、身体の下敷きになったのか。
こいつは…もう…。
「いつも、頑張って勉強してるよね。教室で」
三好燐火が呟く。
俺が携帯やキーボードを広げて作業している姿を、当然この女も見ていたはずだ。
何だか、急に恥ずかしくなった。
「勉強なんて、高尚なもんじゃないよ。楽しいから、やってるだけだ」
「へえ、一体何を?」
「…競技プログラミングだよ。与えられた問題を、プログラミングの技術を使って時間内に解く」
彼女は感心したような素振りを見せ、次第に残念そうな表情へと変わった。
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