欺瞞の鏡面

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アレは、条件を満たしたもののところに現れる。しかし、例外もあった。誰かと一緒に寝ているもののところには現れないのだ。それはあのグループ内で検証できた。当時一緒に行動したうちの3人は、悪夢を見ることすらなかった。彼らは家族と一緒に寝るなどしており、夜1人ではなかったのだ。つまり、誰かと一緒にいればいい。あの女の子はいつも一人で眠っていたというのを私は知っている。この男もそこまでは理解できているのだ。どんな調査をしたのか、それとも推理かはわからない。しかしそれはきっと確かで、だからこそこの五年を生きながらえることができたのだろう。男の日和見な顔を見ていると腹が立った。 「ふざけないでほしいもんだ。もうさ、わかってるだろう、私が全部知ってるの。お前はアレの名前を呼んだ。誰かと一緒じゃないと危険だということを知った。それで、一人暮らしで声の掛けやすそうな、偶然見かけた私を頼った。家族や他の親しい友人を頼らなかったのは、もしも巻き込んだらと思うと怖かったからだ。私なら別に巻き込んで何かあっても罪悪感は感じない。そうだろ」 「そ、そんなこと」 「言い訳は認めない。お前はあの子と一緒のグループだった。あの子と一緒に私のことをからかった。一番いじめられてたのは他の子だったけれど、その子がいないときは私でたくさん遊んだだろう。うんざりなんだよ、これからもずっとお前の顔を見続けるのは。だから危ない橋を渡ることにした。私といたら霊障は避けられない。こうすれば来年からはここに泊まる理由がなくなる。なあ、許されてるとでも思ってたのか?」  男は青ざめた後真っ赤になって、白くなるほど唇を噛み締めた。ぎゅうと拳を握ったあと、私に背を向ける。 「わかった出てく」 「馬鹿言え、今出たらアレが来るぞ」 「そしたらお前も俺がおかしくなってせいせいするだろ!」 「私も危ないって言ってるんだ。せっかく作った結界を無駄にしてくれる気か」
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