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disclosure
金曜日までは長かったが、父さんが不在の3日間、僕はPCにアクセスする機会をたっぷり得た。
母さんが覗いた時に開く真面目なサイトを準備して、いざ――真っ赤なハートアイコンをクリックする。
【WELCOME!】
迷わず文字をクリックし、早速『0000』から入力した。
3日も時間がある。きっと、扉は開くだろう。
僕は、自分が世界的なハッカーになったような気分だった。
-*-*-*-
そして、その瞬間はついに訪れた。
【WELCOME! ENTER→】
「――やった……!」
1人、声を殺してガッツポーズする。
土曜日の、深夜23時半。
母さんはとっくの間に眠っている。
僕は、好奇心に膨れてパンパンの胸を抑えながら、【→】をクリックした。
鉄の扉が、ゆっくりと開いた。
トップページと同じ黒地の画面に【MENU】という赤い文字。
その下に、グレーのバナーが3つ、等間隔に並んでいる。
左から【依頼する】【依頼を受ける】【利用履歴】とある。
これだけでは、何のサイトなのか、さっぱり分からない。
とりあえず、僕は【利用履歴】を開いた。
最新の記録は、今週の火曜日の夜だ。
【依頼人N村様より、依頼No.00018694を引き受けました】
その前は、先々週の月曜日の夜。
【依頼人S川様より、依頼No.00018016を引き受けました】
履歴を遡るが、こちらから依頼を出した記録はない。
父さんは、一体何の依頼を受けているんだろう……?
小学生の僕でも、これが普通の会社関係の【依頼】ではなさそうなことは、察しがつく。
第一、こんな怪しげなサイトを介して、仕事が入るとは思えない。
触れてはいけない父さんの秘密を覗いてしまうようで、僕は随分躊躇した。
好奇心で踏み出したものの、漕ぎ出した岸には戻れないような――そんな予感が沸き出している。
【MENU→】
確かに、ここで扉を閉じるという選択肢もあった。
しかし、僕は後には退けないという覚悟に似た思いに取りつかれ――。
【依頼を受ける】バナーをクリックしてしまったのだ。
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