運び屋ジャズ&スパイシー

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 コリアンダーは、宇宙船「パイサー・ワスール号」を運転しながら辟易とした顔をしていた。 「それで? そのローレルとかいう子供の依頼を引き受けたのか?」 「まあな」 「馬鹿げている。アートブレイキー一族の生き残りなんて懸賞金がどれだけついていると思っているんだ? 同業や賞金稼ぎがわんさか押し寄せてくるぞ」 「そうかもしれないけど、放っておくわけにもいかないだろうさ。それに宇宙世紀を創り上げたアートブレイキーの黄金レシピなんて魅力的だろ?」 「確か、スパイスブレンドによる化学反応、ブレンドリーファイアーだったか。この宇宙船の燃料や俺たちの銃弾なんかにも利用されている科学技術だ」 「少量のスパイスで引き起こる膨大な熱量は、あらゆる科学技術を超越した。それが100年前のお話さ」 「それからもアートブレイキー一族は様々な研究成果を発表したが、今までのあらゆる科学文明を崩壊させるその叡智に人々は恐れをなした」 「いつしかアートブレイキーの黄金レシピは、宇宙世紀のアンタッチャブルとまで呼ばれるわけだが、さてさて、あのローレルって女の子が本当にそのアートブレイキー一族の末裔なのかは分からないなぁ」  助手席にいるクミンはダッシュボードに足を引っかけて、寝そべった。  コリアンダーはスパイスシガレットを口にくわえて、ため息をついた。 「地球の星間大使館か。けっこうな時間がかかるぞ」 「それまで平和に過ごせればいいけどねぇ」 「他人事みたいによ」 「あの……」  操縦席の後ろ、貨物エリアからローレルが顔を出した。
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