運び屋ジャズ&スパイシー

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 貨物エリアの後方ハッチの扉がパイルバンカーによって豪快に突破されていた。  スパイス調合、ブレンドリーファイアーを利用した射出型パイルバンカーの使い手で、宇宙飛行中の船に強制ドッキングなんて無茶をしてくる相手といえば、クミンには一人しか思い浮かばなかった。 「カイエンペッパーか!」 「その通りだ、クミン! いや、運び屋ジャズ&スパイシー!」  カイエンペッパー。獅子のたてがみの形をした赤い髪、筋骨隆々とした肉体とそれを覆う黒色のジャケット。両手には巨大なパイルバンカーを装備している。  そのカイエンペッパーの周りには、銀の装甲でコーティングされた多目的アンドロイド『レトルト』たちが各々に武装して大挙していた。  運送会社「チャックデパッテー」の社長カイエンペッパーとその一味であった。 「今回のお届け物アートブレイキーの黄金レシピは、俺たちチャックデパッテーが運送させてもらうぜ!」 「いきなり来て、藪から棒だな。どこでその情報を? 届け先は一体どこだ?」 「さあな。それが知りたければ俺を倒すことだ! ジャズ&スパイシー!」  カイエンペッパーが腕を振るう。 「いけぇ、レトルトども!」  レトルトたちが対生物用ショックガンを撃ち放った。  クミンは素早く動いて、素早く頭を下げた。射撃はクミンの頭を通り過ぎて、壁にぶつかる。クミンは腰に提げていた銃を取り出して、引き金を引いた。何度も何度もだ。  あっという間だった。  カイエンペッパーの周りにいたレトルトたちが、反撃をする暇もなく倒れた。 「安心しな、威力はほどほどにしてあるからよ」 「な、ななっ、レトルトたちを一瞬で!?」 「お前もいい加減、レトルトに頼るのはやめたらどうだ、カイエンペッパー? ちゃんとした人の従業員を雇えよ」 「う、ううううるさーい! お前なんぞに言われなくてもこの仕事が成功すればちゃんと人を雇ってやるさ!」  カイエンペッパーはパイルバンカーを起動させた。
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