0人が本棚に入れています
本棚に追加
プロローグ
いつも通りの日常。
いつも通りの授業。
そんな、当たり前の日常。
2019年4月7日。午後に入学式を控えたこの日、2・3年の生徒はいつも通りHRを受けていた。
おめでたい入学式の日にもってこいの快晴。雲一つない綺麗な青。
また、いつものように何もない一日が終わっていく。
誰もがそう思っていた。
しかし。
退屈な日常の終焉を告げる“呼び出し音”がスピーカーから流された。
これまで、授業中に呼び出し音が流れたことがあるのは避難訓練の時のみだ。
当然、この日に避難訓練があるなど知らされていない。
各クラスでHRを行っていた担任たちは不思議な表情でスピーカーを見つめている。
そして次の瞬間、ありえない言葉がスピーカーから流れる。
『HR中のところ申し訳ありません。この学校は今、私たちによって支配されました』
スピーカーから流れる声はとても落ち着いていた。
まるで、これから起こる全ての出来事を予測しているかのように。
教室にいる生徒たちはざわつき始める。
「いたずらかよ」
「早く帰りたいんだけど」
「なんかやべぇ奴いるんだけど」
「誰?」
嘲笑、困惑。困惑の声も半ばバカにしたような口調だ。
各々、誰も信じてなどいなかった。
教室に入ってきた黒づくめの男たちに銃口を向けられるまでは――。
「動くなッ」
悲鳴、悲鳴、悲鳴。
教室には二人のハンドガンを構える男。
平穏――くだけて言えば退屈、な日常が一瞬にして壊された。
ハンドガンを見て泣き喚く者、固まって動けなくなった者、状況を理解できず頭を抱える者、隣にいる人間の肩にすがって必死に助けを求める者、手を合わせ何かを懇願する者、それぞれに抱く思いは一つ。
2019年4月7日午前11時50分頃、現時点で各教室、職員室、校舎周辺は総勢28名の実行犯たちにより完全包囲された。
これは、偏った片想いから生まれた一人の異能力者とその仲間による完全犯罪の物語。
最低、最悪、最狂の悲劇の連続。
長く、終わりの見えない一ヵ月が、始まった。
事の始まりは、冬季休業明けの1月21日に遡る。
最初のコメントを投稿しよう!