ママはいつも雨の中にいる。

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ザーザーと続く大きな音の合間に パシャン、とひとつ音が混じった。 それに合わせて 閉まったままのシャッターが かたんと鳴いた。 「あれっ…」 小さく声が聞こえる。 「なんかいる。」 パシャ、パシャ、と 少しずつ水を踏む音が近付いてきて 「ネコだ。」 女の人は言った。 「捨て猫かい?寒くない?」 その人はボクに問う。 体の冷え切ったボクは 何も言えず、ただじっと丸くなっていた。 「寒いよね。びしょぬれだもんね。」 そう言うと女の人はボクを持ち上げて 濡れた腕でぐるんと包んだ。 「にゃー。」 「あ、鳴いた。一緒に行こう。うちで温めてあげる。」 ボクを抱いた女の人は 傘もささずに走って行くから 大粒の雨がボクらの上にどんどん落ちてきたけど 不思議と、さっきみたいに寒くなかった。
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