心を尽くして

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「叔父さん……お婆ちゃんが……」 「ああ、わかってる。ケイタから聞いたよ。お婆ちゃんが守ってくれたんだね」 「ケイちゃん……」 皐月に名を呼ばれて私も皐月から見えるように近寄りました。 ふふ、と皐月はかすかに笑いました。 「ボロボロ……だねえ……」 変わり果てた私の様子に皐月は驚いたようでした。 「ずっと……見てくれてたね……」 「うん……」 不意に涙が溢れ、私は泣いてしまいました。 「ふふ……」 皐月はまた少し笑いました。 「ケイちゃん……ありがとう」 それから、皐月は数日のリハビリを経て退院しました。 身体中の筋肉が衰えていたので車椅子で退院した皐月は、それからじっくり一年かけて健康な体を取り戻していきました。 私も同様にオバケ状態から人間らしい容姿へと戻っていきました。 ここからは蛇足になるのでざっくりと書きますが、怨霊が消えた町は以前にも増して活気付いていき、兄は金森先輩と一緒に東京へ行きバンドで成功する夢を追い、私と皐月は結婚して5人の子供を授かりました。 昭和の終わりの頃この町を襲った怪異は、今ではお伽話のように語られるのみです。 大人達は子供を怖がらせるために言うのです。 「いい子にしないと首くくりのオバケがくるよ」と。
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