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盆踊り
回覧板を手にした母が私と兄に気をつけなさいと言ってきました。
「山犬が活発になってるみたいだから、あんた達も注意しなさいね。街中にも出てきてるって」
困るわねーもー、と牛のようないななきを残して母は隣家に回覧板を回しに行きました。
当時私達の町を囲む山の中には野生化した野良犬が沢山いて、山菜を採りに山へ入るときは充分に注意するのが鉄則でした。
たまに猟友会が何匹か間引いたりもするのですが、山犬は一向に数が減らず、また昔から変わらぬ風土柄ということもあって、気にしながらも山犬とは共生していました。
山犬が町中に下りてくる。
今までもたまにありましたが、その度に保健所の人が対応に追われていました。
山犬だけでなく猿なんかもたまに街中に現れます。
学校帰りに捕獲用の大きな網を持った集団を見かけて、そのまま大捕物を野次馬するのは小さな町の大きなイベントでもありました。
いつも通り兄と神社に向かっていると、電信柱に『害獣注意!◯月◯日、この付近で山犬が目撃されました。危険ですので決して近づかないようお願いします。目撃情報は◯◯市役所 担当◯◯まで』という張り紙が貼ってありました。
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