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家の近辺に危険な動物がいるかもしれないという若干の不安を胸の隅に抱えつつ、私達は神社へと急ぎました。
神社に着くと数名の大人が集まってワイワイやっていました。
お祭りの時にも似た大人達の喧騒が耳に入ってきます。
どうやら猟友会の人達が、これから山に入るために集まっているようでした。
神社は山に通じる山道の麓付近にあり、町から山へ入るには必然的に神社の前を通ります。
なので集合場所が神社になるのはいつも通りのことでした。
いつも通りに猟友会の人達が山へ入って山犬その他を駆除する。
たまに鹿なんか撃った日には興奮冷めやらぬ様子で大騒ぎしながら凱旋してきます。
そんないつも通りの光景が、これから始まる恐怖の幕開けでした。
本殿にお参りしてから猟友会の人達が山へと入って行きます。
それを見送った私達はいつも通りに神社の手伝いをして、目前に迫った盆踊りの準備をしていました。
櫓に使う木材を準備したり、提灯の灯りが着くか一つ一つ点検したり、大人に混じって私達も働いていました。
皐月は今年初めて舞う巫女舞の振り付けを必死になって練習していました。
教えているのはシズ婆さんです。
私と兄は巫女装束で神楽を舞う皐月を横目でチラチラ眺めながら働いていました。
盆踊りまであと3日。
その日、山に入った猟友会の人達は帰ってきませんでした。
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