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それまでも住職さんは何度か皐月の見舞いに来てくれていましたが、私と顔を合わせることはなかったので、この半年で見違えてしまった私を見て驚いていました。
「ケイタ君大丈夫か?お役目のことは篠宮さんから聞いとるが、このままでは君の方が持たんのと違うか」
私は大丈夫ですと答えて、最近の怨霊の変化を住職さんに説明しました。
念仏のことまで話し終えると住職さんはウーンと唸り綺麗に剃りあげた頭を撫でました。
「なんちゅう……なんちゅうことだ……皐月ちゃん」
そう言って皐月を見つめ深くため息をつきました。
「そしてケイタ君、君も大変なお勤めご苦労様。辛いだろうに、尊いお勤めを果たす君達に私は頭が下がります」
私の目を真っ直ぐに見てそう言ってくれました。
私は照れくさくて頭を軽く下げました。
「それにしてもなあ……とんでもない化け物かと思うとったが、その魂の中に哀れを催す者がおるとは。怨霊と化してなお皐月ちゃんのために御仏の救済を祈るか」
住職さんは神主さんに向き直って言いました。
「篠宮さん、そのぅ……差し支えなければ経を上げさせてもらえんだろうか」
住職さんは私服で来ていましたが懐から数珠を取り出しました。
「皐月ちゃんのために念仏を唱えてくれとるその魂のために私も経をあげてやりたいんだ」
神主さんが快く応じると住職さんは手を合わせて静かにお経を唱え始めました。
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