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それでも皐月を殺して笑う老人から悪意が消えることはありませんでした。
皐月に加えられる暴力はいよいよ苛烈になっていき、皐月が絶命した後も亡骸を執拗に痛めつけ嬲るようになりました。
それが何日か続いたある時、いつものように老人が鎌を持って現れました。
皐月はひれ伏して謝罪の姿勢をとっています。
すると皐月と老人の間に割り込むように、いつも皐月を観察していた少女の霊が立ちました。
黙ったまま老人を見つめています。
老人は困惑しながらその場で鎌を振り上げました。
「ぬしゃ……っとぞ!………ごりょうなんも……ぶちくらして……!!」
老人が何事か喚いていますが言葉は聞き取れませんでした。
少女の隣で皐月を見ていた男の子の霊も少女の傍に立ちました。
そして周りで見ていた靄のような人影の群れ中から1人、また1人と大人の霊が歩み出て来て少女達の側に立ちました。
歩み出てきた霊の顔ははっきりと見えました。
その中にお婆さんの霊がいて、手を合わせて念仏を唱えていました。
あの人が……!
こみ上げる思いに全身が熱くなりました。
「もうよか」
誰かがそう言いました。
明瞭な声ではありませんでしたがはっきりと理解できました。
「もうよか」
「もうよか」
「もうよか」
「充分ったい」
「もうよか」
「許しちゃろ」
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