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「儂らも悪うて」
「可哀想にのお」
次々にそんな声が上がりました。
声も靄の向こうから聞こえてくるような、不思議な感覚でした。
老人は気圧されたように後ずさり、鎌を振りながらわめき立てました。
「……しょっとんか!……ああ!?……」
老人は激しくがなりたてました。
「もうよか」
「もうよか」
「もうよか」
霞のような声も止まりません。
「じゃっだら……!……ぬしゃら……!!……ばいよんぞ!!」
老人は絶叫を残して消えました。
そして私は目を覚ましました。
お役目について初めて、皐月が殺される様を見ることなく目覚めた。
そのことが信じられない思いでした。
しかし徐々に実感とともに喜びがこみ上げてきました。
怨霊達は口々に「もういい」と言ってくれました。
皐月はついに許しを得たのです。
それが夢でないのは確信が持てました。
あと1人。
あの老人の霊は皐月を許してくれるだろうか。
遠からずそうなりそうな予感はありました。
なんせもうあの老人しか残っていないのだから。
もしかしたら今お役目をやめても、これ以上怪異は起きないのではないか。
そうも考えました。
あとは皐月がいつ目覚めるかに任せようと思いました。
そしてその夜、老人の霊が現れました。
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