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老人の後ろに何人もの霊が付き従っています。
黒い霞のようなその集団に目を凝らすと、昔の服ではなく現代の洋服を着ている人達でした。
知った顔もあります。
あれは猟友会の人だ。
亡くなった氏子さんもいる。
校庭で動く死体となった◯◯先生も。
老人が連れてきたのは、一連の怪異で亡くなった数十人の住人達の霊でした。
老人の霊は皐月の前に住人の霊を並べてニタニタ笑っています。
その日は皐月を挟むようにして両隣に少女と男の子の霊が立っていました。
大人達の霊はまた少し離れたところから見守っていました。
現代の住人達の霊は恨めしそうな顔で皐月を睨んでいます。
怨霊に殺された彼らもまた怨霊となったかのようでした。
住人達の霊は何事かボソボソと呟きながら皐月の方へ歩いてきます。
皐月は正座したまま手をついて言いました。
「亡くなった皆さん、どうか安らかに……安らかにお眠りください……どうか……」
皐月の懇願に応えるように、住人の集団から小柄な人影が進み出ました。
「お婆ちゃん……」
皐月がその人影を見て声を漏らしました。
集団から抜け出してきたのはシズ婆さんの霊でした。
住人達の霊は立ち止まりました。
変わらぬ恨めしそうな顔で皐月を見ています。
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