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しばらく夢中になって踊っていると、ふとどこからか視線を感じました。
左を見て、右を見ると、ベンチに座ったお婆さんが私を見ながらニコニコしているのが目に入りました。
お婆さんは座ったまま両手だけ盆踊りの振り付けに合わせて動かした後、私に向かっておいでおいでと手招きをしました。
お婆さんの元に行くと、「婆ちゃんの真似してみな」と言って再び盆踊りの振り付けを手で見せてくれました。
右へ左へ、両手をクルリと回しながら優雅に動かす踊りの所作はとても綺麗で、私も一生懸命真似をして手を振ります。
「上手上手。さあさ、足も動かしてみな」
そう言われてお婆さんを見ますがお婆さんは座ったまま。
今思うと足が弱っていたのだとわかりますが、当時の私はそんなこと気にするはずもなく「お婆ちゃんもやってよ」と言って困らせてしまいました。
ふとお婆さんが踊りの輪に向かって大きく手を振り、誰かを呼び寄せるような仕草をしました。
振り向くとこちらへ駆けてくる人影が見えました。
踊りの輪から抜けてこちらに駆けてきたのは私と同じか、ちょっと年上の女の子でした。
綺麗な浴衣を着て、踊っていたからか汗だくになっているその女の子は、私とお婆さんを見比べて、はて?という顔をしました。
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