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「皐月。この子に踊りを教えてやってくれないかい?」
お婆さんはニコニコしながら皐月に話しかけました。
「いいよ!あんた誰?」
皐月は満面の笑みで私に笑いかけてくれました。
私は自己紹介をし、遠くで金魚すくいをしている兄を指差して一緒にお祭りに来ていることを伝えました。
「ふーん」
皐月は兄を見てそう言い、
「じゃあやってみよっか!」
と言ってその場で踊りを披露してくれました。
ちょうどスピーカーから炭坑節が流れて来たので、その音に合わせて右へ左へ上へ下へと手を振り足を運んで振り付けを見せてくれます。
夜店の電球に照らされたその姿はとても綺麗で、私はちょうど櫓を背にして神社の外側を向く形で皐月を見る位置にいたので、暗闇が後ろに広がる中で電球の光に浮かび上がった皐月の姿は幻想的で見入ってしまいました。
「どう?わかった?」
炭坑節を踊り終えた皐月が満面の笑みで聞いて来ます。
ボーッと皐月に見とれていた私は「えっ…あ…」みたいな言葉にならない変な声を出していたと思います。
正直あまり覚えていません。
「まあ一回じゃわからないよね!最初から教えてあげる!」
皐月はやたら元気いっぱいでニカッと笑います。
この笑顔が見たくて、私はその後も何度も神社に通うようになります。
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