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そうして手取り足取り、最初から最後まで振り付けを教えてもらい、かなりの時間がかかりましたが炭坑節を踊れるようになりました。
「ちょっと待ってて!」
そう言って皐月はどこかへ走って行きました。
横を見るとお婆さんがニコニコしながら見ています。
「上手上手。もう踊れるようになったね」
そう言って手を叩いて褒めてくれます。
私は嬉しくて照れ臭くてなんとも言えない顔をしていたと思います。
そうこうしていると皐月が戻ってきました。
「最後にもう一回炭坑節をお願いしてきたから、次に炭坑節がかかったら一緒に踊ろう!」
と言って私の手を取り輪の方へと歩き出しました。
ちょうど兄が私の方へ歩いてきていて、皐月に手を引かれる私を見て驚いていました。
「篠宮じゃん。何してんの?」
兄はどうやら皐月のことを知っているようでした。
「小林じゃん。この子あんたの弟?踊り上手くなったよ!」
皐月はそう言ってニカッと笑いました。
ちなみに篠宮というのは皐月の苗字、小林というのが私達の苗字です。
しばらく輪の外で待っていると、スピーカーから炭坑節が流れ出しました。
タタンッタンッと手を打ち鳴らしている輪の中に入れてもらい、皐月の後ろで緊張しながら踊りが始まるのを待ちます。
兄が不思議そうに見ています。
「月が~出~た出~た~月が~出た~あよいよい!」
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