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先代神主の家に嫁入りして来たのはいいのですが、家庭を守るのに徹するかと思いきや当の先代神主以上の力量でお祓いやご祈祷をこなすようになり、神主ではなく神様そのものに嫁いできた神嫁だと九州の神社界で評判になった人物でした。
そんなすごい人だとは知らずに、神社に行くたびにシズ婆さんの住んでいる家にもお邪魔して手ずから煮出した麦茶をご馳走になったりしていました。
兄と皐月は同じ学年の同級生で、盆踊りがきっかけで学校でも会話をするようにったそうです。
兄達が卒業して中学生となり、皐月は一段と女性らしく綺麗になっていきました。
中学に進学したことがきっかけだったのか、兄と皐月が付き合い始めました。
私としては失恋です。
しかしそれまで通り3人でよく遊んでいました。
時折兄と皐月がお互いを意識して黙ったりうつむいたりしているのを見て、最初は羨ましく感じていましたが、あまりに二人がウブだったので私は焦れて「いいからさっさと手ぐらい繋げよ」とか「いい加減キスしろよ」などと言ってからかったりもしました。
「ケイちゃん!もう!」
と皐月は怒るのですが、その怒った様子もまた可愛らしく見えて、私としては複雑な気持ちになったものでした。
「ケイタ(私)。お前あとで殺すからな」
兄も真っ赤になりながら遺憾の意を表明していました。
その日は3人で集まって神社の掃除をしていました。
翌週の盆踊りに備えて境内の草むしりやらなんやらをするのです。
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