269人が本棚に入れています
本棚に追加
/138ページ
暴走族といっても町に1つしかないので、他の暴走族と抗争を始めたりとか縄張り争いをするとかいうこともなく、あえていうならバイクに乗るときにヘルメットを着用しないというだけの、今思い返すとなんとも可愛く珍妙な集まりでした。
決闘は三年生の勝利で終わったようで、大股で歩き去る三年生の姿を見送ってから私達は金森先輩の元へ走りました。
「怪我してたら連れておいで」
と後ろでシズ婆さんが言いました。
決闘に負けた金森先輩は地面に胡座をかいてうなだれていました。
私達が近づくとこちらに顔を向けて舌打ちしました。
「チッ。見てんじゃねーよ」
力なく呟く金森先輩の傍に兄が近寄り肩を貸して立ち上がらせます。
「痛てて。ちょっと待て。ゆっくり……」
金森先輩はどうやら足をくじいていたようで、痛そうに立ち上がりました。
先輩曰く足をくじかなかったら負けなかったとのこと。
歩くのが辛そうだったので私も兄の反対側から先輩を支えてシズ婆さんの元へ連れて行きました。
シズ婆さんはすぐに湿布と包帯を用意して手当てしてくれました。
金森先輩はシズ婆さんに頭を下げて帰って行きました。
不良のくせに礼儀正しい金森先輩でした。
「アッちゃんは喧嘩したらダメだよ」
と皐月が兄に言いました。
アッちゃんことアキオである兄は「俺はそんなアホなことはしねーよ」と言っていましたが、生の喧嘩を見て少し興奮しているようでした。
最初のコメントを投稿しよう!