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「なーにがー?」
こうすると涼しいのだ。ヒナタもズボンの裾から風を送ればいいのに、と思う。見ると、呆れた表情をしながらも、ヒナタの目はどことなく落ちつきがない。目を合わせると、さっと目をそらされ、また氷菓子にかみつく。ユカリは首をかしげると、また眼前に広がるのんびりとした町に目をやった。
家が近く、二人とは兄や弟のようにして過ごしてきた。何も隠す必要のない間柄だと思っていたのに、互いの色を変え始めたのは、こちらか向こうか。
この間、ミカゲが妙な事を言った。ユカリにとって、オレ達は何なのだ、と。もやのような身の内を言葉にできず、「兄弟のようなものだから」と濁す。それを聞き、深く寄せた眉根が心に残っていた。
ふと何かを感じ、町からその方に目をやる。ヒナタがじっとこちらを見ていた。
「何?」
するとヒナタはブンとかぶりを振る。何も言わず、町に目を向けた。夕日に横顔が照らされる。染まった頬は、夕日の色では足りない気がした。
「一口ちょうだい。」
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