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「元々オレのだ!どこかじろうがオレの勝手だ!」
ふーん……、と言いながら、ユカリは向きを変えた。
「……ユカリ?」
手を地面に置き膝をつく。ほぼ四つん這いで、じり、と間を詰める。手に持った氷菓子からしたたり落ちる甘い蜜をペロリと舐めると、シャリッとまた一口、かじる。上目遣いに見ると、口をぽかんと開けたヒナタが、頬を染めている。上下するヒナタの喉。きっと、胸の音が大きく聞こえ、周りの景色がまどろんでいるはず。
「あ……、ユ、ユカリ!卒業したらどうするんだ?」
ユカリはハッと目を見開いた。真っ赤な顔をしながらも、ヒナタはまっすぐユカリを見ていた。目をそらさないのがヒナタらしい。真摯な目に気恥ずかしくなり、くるりとヒナタに背を向ける。
冷たさを少し含んだ風がやっと吹き始め、すっと頬をなでた。
「私、町を出て働くんだ」
いつものさらりとした声で、努めて明るく言う。
「いくつか内定もらってるの。すごいでしょ」
「ユカリは成績いいからなぁ」
「ヒナタとミカゲは、大学行くんでしょ?」
こくりとうなずくと、がんばれ、と優しくほほえむ。
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