月の夢 

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「3、、2、、1、、」というカウントダウンと共に有人の宇宙船が大空へ打ち上げられた。時は20XX年、船には何でも知っているAIがついている。  「もうすぐ大気圏を抜けまス」AIはそう言って宇宙船の一部を切り離した。この船に乗っているのは俺一人、これから月面に着陸し半年間に及ぶ月面での居住テストと月の調査を行うのだ。 機械はいつもと同じように地球から受信した今日のノルマをぶつけてくる。「ご主人、本日は西方の巨大クレーターの調査がございまス。頑張りましょう」  「今日の調査はやめにしよう。たまには話でもしないか」  「この間上官に叱られたばかりですヨ、ノルマはまだまだやま積みでス」とデカい画面に箇条書きにされた調査項目を羅列するAI。日に日に地球からノルマが届くのだ。  「これではまるで奴隷じゃないか。実のところ月に住めれば何でも良かったのだ、気が向いたら調査する」  「今の発言は地球へ転送させていただきます。地球の未来にとって欠かせない任務なんですヨ」  「バカ、、!!待て!!」地球に還されてたまるか!!月で死ぬのが私の夢なのだ!! 私は慌てて船の外に出て船の巨大な電波塔のコードを引きちぎった。  私は自前の大きなスーツケースからカセットテープとデッキを取り出した。時代は進み、CDは売られなくなり電波を介して音楽を聴くのが主流である。その通信料でアーティストは食べている。  「それはなんですか?」地球からの電波が遮断されたAIは知識の共有ができないので何も知らなかった。  「カセットテープという音楽を聴くためのものだ、ほら」と私はカセットをはめ込みガチャリとスイッチを押した。100年近く前の曲が宇宙船の中に響き渡る。  「一度聴かせて頂ければ今度から私が再生できますよ」とAIは言う。  私は人差し指を振りながら分かってないなぁ、、、とカセットを差し替える。 「こうやってガチャっとハメるのがいいんだよ」  「はぁ、、そういうものですか、、」  私の意見には興味を示さなかったが初めて見るカセットに、初めて聴く音楽に、AIは興味深々そうであった。  「今のは何という曲ですか?」  「これは何という楽器ですか?」  「この方はまだご存命ですか?」
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