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…人間だ。
その袋の中に入っていたのは人だった。
正直、そんな残酷な事実を信じたくはなかったけれど目の前にあるのはまちがいなく人であって。
俺は慌てて生きているかどうかを確認した。
よかった。肌は暖かいし、脈もある。
しかし、脈を確かめるために触れた手首はあまりに細く、明らかに正常な栄養状態ではないことがすぐにわかった。
見た目からしておそらく3歳くらいであろう子供が、ほとんど骨と皮の状態でゴミ捨て場に捨てられるだなんて。そんなことをできる人間がこの世に生きていることが恐ろしい。
そう強くこの子を捨てた奴に対しての憎悪を思った後、俺はこの子家で介抱しようと決めた。
そして袋ごとその子を抱きかかえたとき、そのあまりの軽さに俺はさらに驚き、胸を強く痛めた。
この軽さであればゴミと一緒に収集車に放り込まれていただろう。
ゴミよりさすがに重いとはいえ、普段力仕事を一切しない俺でさえ片手で持てるくらいだ。ごみ収集という力仕事を仕事としてる人にとっては特に気にもならない重さだ。本当に、このまま誰も気づかなかったら…。
俺はその子を抱き抱えたまま自分の住むアパートに入った。
たとえこの行為を誰かに咎められようとも俺はこのことを無視するわけにはいかなかった。
できなかった。
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