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「あ…れ…?」
不意にか細い声が聞こえてきて俺はハッとした。
この子が喋った…のか?
そのやつれた顔に目を向けると小さな子は眩しそうに目を細めながら俺を見つめていた。
「どこ?だあれ…?」
まだ舌足らずな喋り方で不安そうに、少しの物音でかき消されてしまいそうなほど小さな声でその子は尋ねた。
幼い真紅の瞳。綺麗だけれど奥に光のない瞳。
飲み込まれてしまいそうな瞳から少し目線をずらして何か喋ろうとしたがその質問への答えはすぐに出てくることはなかった。
まさか、「捨てられていたんだよ」というわけにもいかない。
誰と聞かれても名前以外に名乗れるような名称などない。
俺が答えかねて黙っているとその子が先に口を開いた。
「お兄さんが…助けてくれたの?」
「えっ?」
驚きのあまり素っ頓狂な声をあげてしまった。
「ぼく…お母さんにたくさん蹴られたあと大きな黒い袋にはいって置いていかれちゃったの。」
「それって、〝すてられた〟ってことなんでしょ…?」
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