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意識は起きてるが、体は動かさず視覚以外の五感でターゲットを探す。寝起きからついてない、だがこれが日常。感覚を研ぎ澄ませていくとどうやら足元側50メートルほどのところにいるようだ。気配は3つ、奥に2つ少し離れたところに1つ。
音を立てる事なくすぐさま起き上がり手元にあるベレッタ92を手に取り左肩を支えに窓際に身を隠す。
相手の動きを待つ。
20分程経ち、1人はまっすぐこちらに向かい、もう1人は右手側に迂回し二手に分かれてこちらに向かってくるようだ。数的にも圧倒的に不利な状況だが、少し笑みが浮かぶ。
有効射程内には入っているがまだ引きつける。標準は手前のターゲットに向けてはいるが、どちらも岩肌に隠れていて狙うことができない。さらに迂回している方は奥に回り込もうとしているのでタチが悪い。下手したら命を落とすかもしれないそんな状況で、常人なら息は荒くなり正気ではいられないはずであるが。桂木陵という男は酷く冷静である。それどころか、笑みは消えておらず。心なしか楽しんでいるとも言える。
距離が縮まる。40m…まだ見えない。
35…30…、痺れを切らしそうなその時。
迂回していた方が功を焦ったのか姿が見える。「馬鹿め!」蔑むかのように呟く。だが狙いは変えない。
「タァーン」
響く銃声、血しぶきが上がり、岩肌を転がり落ちていく。
手前のターゲットの男は思いもよらない方向からの銃声に慌てる。
「ふざけやがって!邪魔するな!」
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