1人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
私はピラミッドの衛兵である。名前はない。
完成した世界は、金色の三角錐のかたちをしていた。
周辺の様子すらいつの間にやら整えられていて、深い緑に囲まれていた景色は、一面の砂色に変わっていた。
──そうだ、私はこのピラミッドの衛兵である。名前はない。
偉大なるファラオの眠りを妨げないよう、墓荒らしからこの地を守るのが役割だ。
どうか安心してお眠りください、ファラオ。我らが必ず御身をお守りしますゆえ。
このピラミッドがいつから建っているのか、ファラオとはどういう人物であったのか。
知っている者は誰もいない。そもそも疑問にも思わない。そのような複雑な思考は許されていない。
私はただ、決められた役割に沿い、ピラミッドを守っていればいい。
そうすれば、いずれ。
……いずれ?
大事な何かを思い出せそうな気がしたが、予感はすぐに霧消してしまった。
最初のコメントを投稿しよう!