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私のすぐ横を擦り抜けた女の子は、そのまま参拝者の中を走り抜け、拝殿前の格子戸まで辿り着くと、そこを開いて外に飛び出そうとした。
ところが。
格子戸には鍵が掛っていた様子で、押せど引こうどびくともしない。すると女の子は、両掌で格子戸のガラスを激しく叩き始めた。
力任せに、ぶち割らんとする勢いだ。
バンバンバンバン、バンバン…!
これには拝殿内の全員が驚いて後ろを振り向き、女の子の奇行に釘付けとなった。
拝殿の外でも、手を合わせていた二人連れの御婦人が突然の出来事に、目を向いて呆然としている。
私は背後で暴れる女の子を視野に入れながら、祭壇の神職をちらと見た。
神職はこれだけの騒ぎが起きて、参拝者全員が背後の怪異に釘付けとなっているというのに、微動だともせずに祭壇の前に座り、厳かな口調で祝詞を読み上げ続けている。
その姿に、私は奇妙な違和感を抱いた。
―と、そこで我に返った父親が、同じく参拝者らの間を走り抜け、狂ったようにガラスを叩く愛娘を背後から抱え上げると、無理やり元の位置へと連れ戻した。
今度は母親と二人掛かりだ。女の子は嫌悪の表情を露わにしながら、蛇のように身をくねらせてのた打ち回る。
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