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別の悲鳴が上がったのは、彼の着地と同時だった。しっかり見ると、彼の足元にスーツ姿の男がひとり倒れている。というか、踏みつけられている。
「う……そ」
一週間前に別れた彼だった。
急いで玄関に引き戻り、靴をはく。階段を駆け下りて、二人の元に向かう。
白夜に踏みつけにされた彼は私がやってくると苦しそうな顔で腕を伸ばした。
「千歳……助けて……」
弱々しい声で助けを求める彼の背中をダンっと白夜が力強く踏みつける。短いうめき声がもれる。
「千歳。ちゃんと言ってやれ。おまえなんか嫌いだと」
「え?」
「それくらいハッキリ言わなきゃ、コイツには伝わらねえ。別れたいとか、下着なんかいらないとかじゃなくて、コイツ自体が嫌いなんだとちゃんと言え。男ってやつは女よりもずっと未練たらしい弱い生き物なんだ。ケジメをしっかりつけてやらなけりゃ、この先も生霊がつきまとうことになるぞ」
白夜は憐れみの目を彼に向けていた。涙目になった彼が私の名前をくりかえし口にしている。
「私、晃ことが嫌いなの。あなたの選んだ下着も趣味じゃなかった。私はセクシー系より、かわいい系のほうが好きだったの。あなたとは合わないの。もう、おしまいにして」
「全部、君のためだったのに……」
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