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グッと彼が地面の砂を握りしめた。そんな彼の背中から白夜は飛び降りると、顔の横に足を広げてしゃがんだ。地面に突っ伏す彼の顔を強引にあげさせると「おいっ、こら」と言った。
「本気でアイツが好きなら、怖がらせたり、命狙ったりしてるんじゃねえよ」
「彼女はぼくのものだ!」
「生意気言ってんじゃねえよ、人間風情が! 自分の趣味を押しつけて、支配下に置こうなんて器がちっせえんだよ! いいか。今度コイツに手を出してみろ。命どころか、魂も塵にしてやるからな!」
「ひいっ!」
あまりの迫力に圧倒された彼は急いで立ち上がると、土も払わずに走って逃げて行ってしまった。
「やっぱりスーツだと動きづらいな」
パンパンとズボンの裾を白夜がはたく。姿は久能先生なのに、やっぱり中身はあのしろねこみたいだ。
「どうやったら、あの礼儀正しい先生がこんなやんちゃになっちゃうわけ?」
「ああ? 憑依術ってやつだよ」
「へえ。よくわかんないけど、夢みたい。私、霊感ないから」
「俺様をそこらへんの低俗な霊どもと一緒にすんじゃねえよ」
「じゃあ、あなたは何者なのよ?」
「は? そんなの決まってる」
長い髪を払い、ブルーの目を細めて彼は笑った。「白夜様だ」と言って――
「さて、俺様は忙しいから帰る」
「あっ。ねえ、お礼は? お金持ってくるから」
部屋へ戻ろうとする私に「いらねえよ」と彼は面倒臭そうに言い放った。
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