【インテーク】あなたの下着、呪われていますよ

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 ウソをついた。時間ならたっぷりある。デート相手となる彼氏とは一週間前に別れた。心が疲れている今だからこそ余計に変な男とかかわりあいたくない。たとえそれが、誰もが振り返るようなとびきりのイケメンであろうとも。  そのときだ。彼が「イタッ!」と小さな声をあげた。 「白夜さん、そんなに怒らないでくださいよ。突然声をかけたのはこちらなんですから。断られても仕方ないですよ」  誰に話しかけているのだろう。キョロキョロと辺りを見回してみる。立ちどまって話をしている相手は私しかいない。けれど明らかに会話の相手は私ではない。すると、またしても彼が「イタッ!」と声をあげて頬をさする。よくよく見ると、頭の上にいるしろねこのしっぽがよくしなるムチのように動いていた。どうやらあの猫が主人である彼の頬をはたいたらしい。 「あの……主人がどうしてもあなたと話すと譲ってくれないのですけど」 「主人って……あなたでしょ?」 「いえいえ、とんでもない。彼がぼくの主人の白夜さんです」  彼は頭の上で香箱座りをするしろねこを指差した。 「……あなた、本気で言ってるの?」 「ええ。もちろん」  彼はニコリとほほえんだ。  本気で思っている顔だ。どうやら相当、頭のおかしい人らしい。 「私、本当に時間がないので……」  踵を返す。これ以上関わったら、こちらまでおかしくなりそうだ。     
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