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【モニタリング】恋せよ乙女、下着を捨てて
「本当にその節はいろいろすみませんでした」
「いえ。私のほうこそ失礼な態度をとってしまい、申し訳ありませんでした」
生霊事件から一週間後、私は『しろねこ心療所』を訪れていた。電車で二時間、山道を登ること40分。人里離れた辺鄙な場所へわざわざ足を運んだのは他でもない、非礼を詫びにきたのだ。
白夜様のおかげで命を狙われることもなくなった。彼にしても、彼の生霊にしても、出てくることはまったくなくなったのだ。
「フレーバーティーですね。白夜さんは柑橘系が大好きなんですよ」
「この間、グレープフルーツティーを頼んでいたから、きっと好きなんだろうなって思って」
久能先生がフフッと笑みをこぼした。縁側で日光浴をしながら、のんびりくつろいでいる白夜様がピタンッと床板を打つ。お腹を見せていることからも、今はリラックスタイムだったようだ。
「あの……今度は白夜様の好きなおやつを持ってきたいんですけど」
「ああ、それでしたら……」
私の耳元でコソコソと久能さんはささやいた。
「え? 本当ですか?」
「ね? かわいいでしょう?」
「本当に。かわいすぎて萌え死にそう」
私たち二人のやりとりが気に入らない白夜様がじろりとこちらをにらみつける。目が三角形に変化していて、ひげがピンっと強く伸びている。
「今度、持ってきますね! キタムラヤのぷるぷるプリン」
「だそうですよ、白夜さん?」
白夜様が起き上がった。片手を突き出し、ぐんっと伸びをする。それから前足を行儀よく揃え、縁側に座り直した。エジプト座りだそうだ。私たち二人のことを警戒しているのだと、隣でこそっと久能先生が説明してくれた。
白夜様が「ウニャア」と小さく鳴く。
まるで「いいかげんにしろよ、愚民ども」とでも言いたげに――
かくして、私は『しろねこ心療所』の大ファンとなった。
「恋をしろ……か。新しい恋は当分ムリかもなあ」
ひょんなきっかけから出会った彼、白夜様の憑依後のお姿を思い出す。また会いたい。そのときはぷるぷるプリンを「あーん」ってしたい。
私はキタムラヤに向かった。
新しい恋に思いを馳せながら――
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