お告げの聞けない天使

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 僕は出来損ないだと指を指されて生きてきた。  神様からのお告げが聞こえない、唯一の天使。  残念ながらそれが僕だ。  何故かは分からない。生まれた時から今まで、この十三年ずっとそうだった。周りの生徒達は順調に胸の扉を開き、神様との交信を成功させていくのに、僕だけが上手くいかなかった。  前代未聞だと、先生方も酷く落胆された。これでは人間界へ向かわせられない。悩める人間達へ、慈悲の手を伸ばす存在であるはずの天使に、僕だけはなれない。  人間へ力添えをしてあげる。それが僕らの存在意義なのに、僕は、僕はどうしよう。  だから、だから僕は決めた。  この天界から出て行く。  どこへかは分からない。  ここではないどこかで、自分を見つめたい。  自分に出来ないことへだけ目を向けても、仕方ない。これでは僕という存在が、あってはならないということになってしまう。  僕の価値は、僕が決める。  そっと、天界から出る為の、禁断の扉を開ける。  この先に、安全という保証はない。  天界以外に安寧は無いとされる、そんな常識を、僕は今日、破る。  新しい自分になる為に。  誰もが知らなかった、自分さえ分からなかった、新しい自分へ生まれ変わる為に。  この、重苦しい扉を開けるのだ。  
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