表札

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 どういう訳か、あの何かが俺の家にやって来ている。  そうだ。表札だ。表札の名前を塗り潰せばこいつはいなくなる。  反射で玄関先へ向かったが、その途中で気がついた。家の表札は門に埋め込むプレートタイプだったと。  ぱっと見は何の異常もない。でもきっと、プレートの後ろにはあの時と同じ文字が書かれている筈だ。だけどプレートを外せない。  両親に訴えたところで、ずっと、じいちゃんの家の証な気配のことを聞き流されたくらいだ。今回も聞き入れてはもらえないだろう。だから、親に頼んで業者を呼び、プレートを外してもらうとかはできない。  年に何度も行く訳じゃないじいちゃんの家ではなく、学校に行っている時以外はほぼほぼここにいる自宅で、いつもあのおかしな気配を感じ続けるなんて。  今からでも、じいちゃんの家の表札裏に同じ文字を書き込めば、こいつはじいちゃんの家に戻ってくれるだろうか。でも、写メなどに残した訳ではないから、書こうにもあの文字を思い出せない。  毎日毎日自宅で感じる、あの、異様でうすら寒い何かの気配。  聞いてもらえなくても訴え続けて、完全にノイローゼになる前に、表札プレートを取り外し、裏に記されているだろうあの文字を消したい。 表札…完
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